〜高橋栄蔵について〜

 高橋慎二郎の祖父である高橋栄蔵は、外国の珍しい品物を商う唐物商と時計商を営む家で、印刷業も営み、慎二郎は、そのような中で、写真技術に興味を持ちました。
 
 高橋栄蔵は、唐物商と時計商を営む傍ら、珠算を得意とし、研究の結果、亀井算という珠算の書物を著しました。そして、東京から印刷機を取り寄せ、亀井算の著書を印刷しました。「亀井算法(上・下)」は、明治12年9月に刊行。編集者:高橋栄蔵、校閲者:金子錦二、出版人:高橋賢三郎。
 亀井算法は、東北大学附属図書館の和算資料データベースに電子資料として掲載されています(和算資料データベースの検索欄に「亀井算法」と入力して検索すると表示されます)。
 亀井算とは、そろばんの割り算の計算法。掛け算の九九を用いる現在の商除法と同じ。







 この印刷機械が基礎となって、後の株式会社高橋活版所の事業へ継続されました。
 高橋栄蔵が住み、その後も高橋活版所が営まれた新潟市の東堀前通九番町1383番地は、現在、他の方の所有となり、立体駐車場となっています。
 
 なお、新潟の商業家の名録等に、高橋栄蔵とその後継者の名が以下のように見られます。

文献 高橋栄蔵とその関係者についての記載
第四銀行百年史 第四銀行は、明治6年に新潟に設立された銀行であり、その設立発起人は、地元の有力な商人や地主たちであった。その設立発起人12名の一覧の中に、「高橋栄蔵 蒲原郡新潟港 輸入販売業 30株」との記述がある。
明治21年 新潟市商業家明細図 明治21年発行の新潟市の商店の名前を細かく記載した地図。「東堀前通九番丁」に、「高橋活版所」の記載がある。
都道府県別資産家地主総覧
(新潟編1)
(日本図書センター、
渋谷隆一編)
資料1
「越後持丸艦」
明治19年発行の新潟の資産家番付で、252名の記載がある。その中の中ほどで、新潟区東堀通九番町 高橋榮蔵」の記載がある。
資料7
「新潟県下名誉鑑」
明治22年発行で、明治21年度の新潟県下の所得税を納める者のうち年間所得額300円以上の者をとりあげ、4600名が記載されている。その新潟区の項に、「五百七拾六円 東堀通九番町 高橋榮蔵」の記載がある。
資料19
「日本全国商工人名録・第2版」
明治31年発行で、主要な町ごとに、商工業者を営業種類別に記載している。新潟市の「金銭貸付業及び代辨」の項に、「高橋新吉 東堀前通九番町」の記載がある。高橋新吉は、栄蔵の妻ルイの養子。
資料20
「日本全国商工人名録・第5版」
大正3年発行。新潟市の「印刷業」の項に、「高橋ルイ 東堀前通九番町」の記載がある。高橋ルイは、栄蔵の妻。
資料21
「大日本商工録第一一版」
昭和5年発行。新潟市の「活版石版諸印刷」の項に、「高橋活版所 高橋鋭二 新潟市東堀前通九番町 活版印刷」の記載がある。高橋鋭二は、高橋新吉の娘婿で、昭和3年に高橋ルイの養子となり家督相続を受けている。